25 前腕の緊張をさげていきながら指にきている筋肉を緩めていく
触手療法はいろいろなことをやって硬直した筋肉を緩めますが、慢性の硬直した筋肉疲労を見付けやすくするために、先に軽い筋肉疲労をとることをします。
施術する前に患者さんがリラックスしてくれたらいいのですから、患者さんの身体を揺さぶってみたりします。
そうすることで軽い筋肉疲労はとれてきますから、続けて施術に移りやすくなります。
はじめは、単に揺さぶってみてリラックスをしてくれたら施術に移ればいいし、慣れてきたら施術の動きにリラックスしてもらいやすい動きを加えたらいいと思います。
手部を見てみます。
まずは患者さんには仰臥位になってもらい、施術者は患者さんの手首を動かします。
仰臥位で患者さんの手を持つと、前腕から手部は下[図25-3]のような形になると思います。
このような角度にして手関節を軽い力で動かすことで、軽く揺さぶる動きが加わります。
患者さんの身体に揺さぶられるような動きが加わることで、上肢に無意識にはいっている力が抜けていきやすいのです。
では、どのようにするかです。
手関節は手の背側を下[図25-3]のようにします。
このときに手根部が伸ばされることになります。
この角度[図25-3]のようにすることで、母指の付け根のあたりや手根部のあたりが伸ばされることになります。伸ばされることでこの部分に圧がかかります。
そして、その伸ばされた手根部あたりの母指側に圧を加えると、その部分の筋肉が緩みやすいです。
(「19親指の付け根を緩める」の続きで緩めていきます。この部分も「親指の付け根」だとも思っています)
触手療法は押すことで筋肉を緩めるのではなくて、疲労した筋肉に圧をかけることで筋紡錘や腱紡錘に圧がかかり、緊張の高い筋肉が脊髄反射によって緩もうとするのを誘導します。
この部分に圧がかかることで「21親指の付け根のところを緩める -3『図21第1指の筋肉の縮み』」で示した①,②の部分が緩みやすくなります。
次に手関節の背屈をします。
そして背屈したら、背屈のために加えた力を抜く、というくらいの動作を何度か繰り返します。そうすることで、伸筋側の筋肉群と屈筋側の筋肉群のどちらも少しずつ緩んできます。
下[図25-3,4,5]の説明です。
手部を背屈して[下図25-3]、次に背屈した手部にかけている力を抜きます。
すると手部は[下図25-4]のような形にもどります。
このくらいの範囲の動きをします。
手関節を動かそうとするとき、患者さんの手関節の可動域は施術者が思っているより小さいと思っておきます。
可動域の大きさが掴めたら、背屈が楽にできる可動域の範囲をほんのわずかに超えるか、というくらいの負荷をかけて、背屈し、背屈に加えた力を抜く…の動きを何度か繰り返します。
このときに手部を広げるような動きも加えると、なお緩みやすい傾向になります。
硬さのある動かし方ではなく患者さんがリラックスしてくるように、手部を動かしながら、楽な感じでわりとリズミカルに動かします。
そうしていると、手部が軟らかくなってきて、背屈できる可動域がほんの少しずつ大きくなっていきます。
簡単そうな作業ですが、勢いをつけて動かしたりしないで、決して無理な大きい負荷はかけないで行います。
これらの作業が進んで硬さがとれてきた筋肉を触ってみると、軟らかくなった筋肉の中に硬直した冷たい筋肉が施術者の手に触れると思います。
本当に筋肉の状態を改善するにはこの硬直した筋肉を緩めることが必要ですが、硬直した筋肉を見つけやすくするために、まずは軽い筋肉疲労をとることから始めるとやりやすいのです。